「遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会」とは
「遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会」メンバー
なぜ「遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会」をつくったか
遺伝子組み換え(GM)作物が世界的に普及し始めたのは1996年のことです。すでに20年以上もたっているのに、その科学的な理解はほとんど進んでいません。その全体像を分かりやすく伝える方法はないものか!そう悩んでいたときに見つけたのが、この映画「FOOD EVOLUTION」です。
反対派はどんな理由で反対しているのか。それに対して科学者はどう反論しているのか。また農業生産者はどう行動しているのか。この映画では、そうした三つ巴の応戦やアクションが、ハワイやアフリカの農業地帯でときに激突の様相を帯びながら、臨場感たっぷりに伝わってきます。
さまざまな立場の人や多様な現場にこれほど濃密に迫ったドキュメンタリー映画は過去にありません。もっとみんなでこの映画を見て、遺伝子組み換え作物のあり方を議論する価値があるのではないか。そう思って、2018年12月、小泉望・大阪府立大学教授ら5人の知人に声をかけ、賛同を得て、「遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会」をつくりました。
今後、各地で上映会を行い、活発な議論を続けていけば、反対にせよ、賛成にせよ、少なくとも遺伝子組み換え作物への誤解は少しずつ解けていくのではないか。そんな期待感をもって上映会を続けていきたいと思います。
遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会
代表 小島 正美
日本で上映会を行う意義
遺伝子組み換え作物の「真実」を知る最良の方法は何か。それは、遺伝子組み換え作物を栽培している農家に直に会って「どんなメリットがあるか」を聞くことです。そして、もうひとつは、遺伝子組み換え作物の研究に通じた学者に教えてもらうことです。つまり、当事者に会うことが大事なのです。
しかし、日本国内ではいまだに遺伝子組み換え作物が商業目的で栽培された例は一度もなく、聞く農家が全くいません。一般の人が学者に会うのも容易ではありません。その観点で言えば、世界各地の現場をフィルムに収めた映画なら、間接的ながら農家や学者の声を聞くことができます。たとえば、映画にはウイルス病で絶滅寸前に追い込まれたハワイのパパイヤ農業が出てきます。それを救ったのが遺伝子組み換えパパイヤを開発した学者だったことが手に取るように分かるのです。
遺伝子組み換え作物をテーマにした映画は過去にもありますが、豊富な事例をこれほど濃密に追ったものはありません。市民や生産者にとって「科学とは何か」を考える題材にもなります。映画は大学や高校の授業にも活用できるし、生協などで消費者向け学習会のテキスト代わりにもなります。ぜひ活用していただきたいと思います。
映画「FOOD EVOLUTION」の背景と見どころ
遺伝子組み換え作物の是非をめぐる反対派と推進派の生々しい激突ぶりがこの映画の真骨頂です。まさにドキュメンタリー映画にふさわしいスリル、緊張感に満ち、見る者を飽きさせません。
そして、名の知れた学者、環境活動家、ジャーナリストなど約20人が次々に登場し、その多彩な表情、身振り、言動に圧倒されます。よくも、これだけの人にインタビューしたものだと感心させられます。
日本ではほとんど知られていない米国・ハワイやアフリカ・ウガンダの生産現場での市民、生産者、学者の激しいやりとりのシーンも圧巻です。ハワイでパパイヤを栽培する農家たちは、遺伝子組み換え栽培に「ノー」を突き付けた議会の決定を覆すために猛アクションを起こし、遺伝子組み換えパパイヤを死守しました。現在、ハワイで流通するパパイヤの約8割は遺伝子組み換えになっていますが、その裏側に、こんな激闘があったことが映画で初めて分かります。
反対派の理論的支柱だった学者が有機食品業界から多額の助成金を得て研究していた事実が明るみに出て、大学を去るシーンも印象的です。
反対にせよ、推進にせよ、それぞれの立場の人がどんな言い分で相手を説き伏せようとしているかを注意深く比べるのもおもしろい。これは科学をどう考えるかという問題でもあります。
地球規模で増え続ける人口を養うために持続可能な農業が必要なのはいうまでもありませんが、それは遺伝子組み換え技術活用型なのか、それとも有機農業なのか。世界の農業の将来を考える上でも貴重な題材を提供してくれます。