推薦メッセージ


ノーベル生理学・医学賞受賞の
リチャード・ロバーツ氏(分子生物学・英国)が映画を推薦

リチャード・ロバーツ氏 リチャード・ロバーツ氏

Richard John Robertsリチャード・ロバーツ氏

イギリスの生化学者、分子生物学者。真核生物のイントロンの発見及び遺伝子組み換え技術の発見により、1993年にフィリップ・シャープと共にノーベル生理学・医学賞を受賞した。

2019年11月25日、「バイオテクノロジーは食料問題と環境問題を解決するか? リチャード・ロバーツ(ノーベル賞受賞者)講演会」(キャノングローバル戦略研究所主催)が東京都千代田区の一橋大学・一橋講堂で行われました。1993年にノーベル賞を受賞したロバーツ氏は講演の中で「映画『フード・エボルーション』は科学的に見て、とてもよい内容の映画です。ぜひ見るよう勧めたい」と熱く聴衆に訴えました。

ロバーツ氏は講演で「特定の形質を新たにもたせる遺伝子組み換え技術は、精密(プリシジョン)な育種方法であり、危ないという事実はない。ビタミンAを強化した組み換えゴールデンライスなど組み換え技術は世界の飢餓や栄養不足の解決に貢献する」と語りました。映画について「賛否両方の動きを描き、とてもバランスのとれた内容です」と称賛していました。


映画を観た方からのメッセージ
(掲載は50音順)

  • 石田萌音さん
    石田萌音さん(広尾学園高等学校 医進・サイエンスコース3年 ※2019年時)

    今日、よく耳にするようになった遺伝子組み換え作物。その安全性をめぐる議論も多数存在する。 映画では「科学的根拠をもって信頼性を勝ち取るには研究者のポリシーがどうあるべきか」「相手の先入観を変えて意見を逆転させることの難しさ」という2つの観点でとても考えさせられるものがあっ た。さらにGM作物が普及していくであろう時代を生きる身として、現状におけるGM作物の位置づけを知ることができる映画であると感じた。

  • 市川まりこさん
    市川まりこさん(食のコミュニケーション円卓会議 代表)

    FOOD EVOLUTIONは、遺伝子組み換え作物について判断の押し売りをしない。映画の中で多様な立場の人たちが「科学」という言葉を使って様々な主張をする。どれもまともなメッセージのように思えて、最初は不思議な感覚になる。しかし、遺伝子組み換え作物の不安を煽る意見には、どうすれば問題が解決するのかという具体的な方策がないことに気がつく。遺伝子組み換え作物をどのように考え、どのように判断すればよいのか迷っている人にぜひ見てほしい。

  • 伊藤潤子さん
    伊藤潤子さん(コープこうべ・元理事)

    遺伝子組み換え食品が市場に出て20余年。スクリーンに映し出された世界の反応の振り返りは強烈なインパクトがあった。この問題は安全性だけに焦点を当てられがちだが、内容は一方に偏ることなく、政治・経済・農家経営にまで及び豊富だ。反対派だった男性がメディアに登場して推進派に変わった理由を率直に語る部分は衝撃的だ。そこにリスクコミュニケーションへの大きなヒントがあるように感じた。

  • 川崎満孝さん
    川崎満孝さん(孤高の自然派画家、長野県池田町)

    自然に入ってくる情報だけでは遺伝子組み換え食品は悪玉だと思っていましたが、映画や本を読むとそうでもなく、自分の無知を痛感しました。壊滅的な被害を被ったハワイのパパイヤ産業を救ったのが組み換えパパイヤだったことも初めて知りました。科学者の中にも反対派と賛成派、また反対から賛成に転じた人など多様で興味深い。映画監督は「科学を重視した」と言います。デメリットがあるかもしれませんが、正しい方向に進んでほしいと願っています。

  • 佐々義子さん
    佐々義子さん(神奈川工科大学客員教授)

    ハワイのパパイヤ農業はウイルスの被害で一時全滅の危機に。それを救ったのが、一学者が開発した遺伝子組み換えパパイヤでした。反対派は『組み換え作物を食べるとエイズになる』などと訴え、一時は議会を説得しました。ところが、科学を重視する学者や生産者たちが勇敢にも立ち上がり、激しく応戦し、議会の決定を覆す光景に胸が熱くなりました。作りたい人が作りたい!と言わなければ普及しないということを痛感しました。

  • 中野栄子さん
    中野栄子さん(元日経BP社 記者)

    この映画の冒頭でハワイの遺伝子組み換え(GM)作物への激しい反対運動のシーンを見て、衝撃を覚えた。というのも、十数年前に当地を取材した際、スーパーには「GMパパイア98セント、普通のパパイア1ドル」とあって、市民は自分の好きな方を買っており、GMが広く受け入れられていると感じたからだ。GM問題にはまだ的確に伝えられていない多くの事実があり、映画はそれをありのままに伝えている。見る側にも覚悟が求められよう。

  • 平沢裕子さん
    平沢裕子さん(産経新聞文化部記者)

    遺伝子組み換え(GM)作物を題材にしたこれまでの映画は反対派の立場から作られたものばかりだった。それに対し、この映画では賛成・反対のどちらか一方に偏らず、さまざまな立場の専門家が登場し、GM作物をめぐって、いま世界で何が起きているかを浮き彫りにしている。これを機に、地球上の全ての人の食をまかなうという視点から有用な遺伝子組み換え技術をどう使っていくのかという議論が進むことを期待したい。

  • 真鍋和孝さん
    真鍋和孝さん(無農薬野菜の「まなべ農園」経営)

    英国の科学作家がこれまでの反対運動を謝罪し、「遺伝子組み換えは人類に必要な技術である」とそれまでの考えを180度変えた場面はとても印象に残る。ただ現実はそう簡単に割り切れるものではないと改めて感じた。かくいう私も消費者としては賛成だが、栽培者としては反対である。遺伝子組み換え作物の真実を捉えるためには、少なくとも三者(栽培、消費、その他)の視点が必要だ。映画のあと、観客に賛成反対を判断してもらうディベートを開催したらおもしろいと思う。

  • 山口夕
    山口夕・大阪府立大学准教授

    遺伝子組み換え作物について、世界でどのような論争が起こっているのか、安全性だけでなくさまざまな視点から考えるきっかけを与えてくれる映画である。賛成派と反対派の単純な対立でとらえられることが多いが、実は目指しているゴールは同じであるというナレーションにハッとさせられた。今一度基本に立ち返って、それぞれのゴールを見つめなおすことで、協働することも可能ではないかと感じた。

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