遺伝子組み換え作物をテーマにした
ドキュメンタリー映画「Well Fed」のご紹介


「Well Fed」~遺伝子組み換え作物をテーマにしたドキュメンタリー映画~

遺伝子組み換え(GM)作物の実像に迫るドキュメンタリー映画「Well Fed」(52分)をご存じだろうか。一度見るだけでぐっと引き込まれる。遺伝子組み換え作物の真実を知るためにも、ぜひ見ておきたい映画である。

これまで遺伝子組み換え作物といえば、「小規模な農家が搾取されるだけで利用価値がない」や「巨大企業に依存した工業的農業を促す技術」といった負のイメージが強い。これらのイメージはどこまで正しいのだろうか。この映画は、小規模農家の多い発展途上国のバングラデシュでどのように組み換え作物が利用されているかを克明にレポートしている点が最大の特色だ。その一方、多様な市民活動家の意見にも耳を傾ける。これまでとは全く異なる角度から遺伝子組み換え作物の真相に迫る濃密なドキュメントである。


真実を追求する知的な旅の物語

映画は、組み換え作物に否定的なイメージを抱くオランダ人のカーステンさん(Karsten de Vreugd)と「組み換え作物の利点」をよく知るオランダ人の科学ジャーナリストのヒッデさん(Hidde Boersma)が互いに議論(写真1)しながら、組み換え作物の真相に迫っていく展開で進む。

写真1
写真1 カーステンさん(左)とヒッデさん(右)
写真2
写真2 Btナスを栽培する農家(左)

カーステンさんは一般市民のほか、環境団体の「グリーンピース」や生物多様性の保全を重視するオランダの銀行幹部などに意見を聞く。「大企業依存」「遺伝子の操作」「長期の影響が不明」などネガティブなイメージが強いことを知る。これに対し、ヒッデさんはオーガニック野菜を見せて「これも遺伝子が変化して改良されたものだ。遺伝子組み換え技術は持続可能な農業を可能にするテクノロジーのひとつだ」と解説する。だが、カーステンさんは納得がいかず、組み換え作物の反対派から転向したことで知られる英国のマーク・ライナスさんに会いに行く。「この世界は科学無視の誤解が多い」と言って、貧しい農家を救済するために開発された組み換えナス(害虫抵抗性Btナス)のことを話した。

零細な農家が多いバングラデシュなら、重要なヒントがあるはずだ。すぐにバングラデシュへ向かった2人は農家を訪ね歩く。そして、農薬を頻繁に使い、健康への影響が懸念される農家の実態を知る。同時に組み換えナスを栽培する農家を訪れる(写真2)。「組み換えナスだと殺虫剤が不要になり、収入が増えた」と明かす。組み換え種子は国の研究所からタダで譲り受けたもので、しかも種子は自家採種してさらに栽培しているという。オーガニック農業のほうがよいと信じるカーステンさんは、ようやく組み換え作物の実像の一端を知る。

このあと、カーステンさんは再びグリーンピースの活動家に会い、自分が見てきた光景を吐露しながら意見を交換する。カーステンさんは、はたして最後にどんな結論に至ったのだろうか。この映画を制作したのはカーステンさん(ディレクター)である。

「Well Fed」は直訳すれば、「十分に食事が満たされた」という意味だが、満たされた世界の人たちだけの論理で世界の食や農の問題を片づけてよいのか!という問いかけが潜んでいる。あえて超訳すれば、「飽食の裏側に潜む罠」といったところだろうか。

「遺伝子組み換え作物に関する映画実行委員会」は、今後、「Well Fed」の上映会を全国各地で展開していきます。上映会のご希望の方は当サイトの「お問い合わせ」よりぜひご一報ください。

(文責・小島正美)


映画の概要

映画タイトル 「Well Fed」https://vimeo.com/188913344
※上記サイトにて視聴可能、日本語字幕は画面右下のCCマークをクリックし選択
上映時間 52分
制作国 オランダ
リリース 2017年6月
映画監督 Karsten de Vreugd
言語 オランダ語(英語、日本語の字幕もあり)

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